かもとりごんべえ Kamotorigonbee
The Flying Farmer

ISBN4-591-03712-6 C8739 P1000E

Translation by Tom Ray and Hiromi Mochizuki (hiromi@hip.atr.co.jp) かもとりごんべえ kamotorigonbee

page 3

むかし ある ところに、
かも を とって くらして いる、
ごんべえさん と いう 男(おとこ) が いました。
ある 日(ひ) の こと、 ごんべえさん は、
「まい日(にち) 一(いち)わ や 二(に)わ の かも を とる の も
めんどう じゃ な。 いちど に 百(ひゃっ)ぱ の かも を とって、
まち へ うり に いけば、 あと の 九(きゅう)十(じゅう)九日 は のんびり
やすんで くらせる わ な。」
そう かんがえて、 ぬま に 百(ひゃく) の わな を しかけました。

--

むかし ある ところに、
Long ago in some place,

かも を とって くらして いる、
ごんべえさん と いう 男(おとこ) が いました。
there was a man named Mr. Gonbee, who lived by hunting ducks.

ある 日(ひ) の こと、 ごんべえさん は、
It happened one day, Mr Gonbee thought

「まい日(にち) 一(いち)わ や 二(に)わ の かも を とる の も
めんどう じゃ な。
"It is troublesome to hunt one or two ducks every day.

いちど に 百(ひゃっ)ぱ の かも を とって、
If one time I hunt one hundred ducks, and

まち へ うり に いけば、
take them to town to sell, then

あと の 九(きゅう)十(じゅう)九日 は のんびり やすんで
くらせる わ な。」
the next ninety nine days I can live a relaxing break, I think."

そう かんがえて、 ぬま に 百(ひゃく) の わな を しかけました。
and he set one hundred traps in the marsh.

--

かも、鴨 = wild duck
とる、とります、とって、採る = hunt
くらす、くらします、くらして、暮らす = live
めんどう、面倒 = trouble, troublesome
のんびり = relax (oneself)
ぬま、沼 = marsh, swamp
わな、罠 = trap
しかける、しかけます、しかけて、仕掛ける = lay (set) a trap

page 4

つぎ の 日、 あさ はやく ごんべえさん が ぬま へ
いく と、 かも が たくさん わな に かかって いました。
かぞえて みる と、 九十九わ います。
かもたち は なに も しらず に、 しずか に
ぬま に ういて います。

--

つぎ の 日、
The next day,

あさ はやく ごんべえさん が ぬま へ いく と、
early in the morning Mr. Gonbee went to the marsh, and

かも が たくさん わな に かかって いました。
there were many ducks caught in the traps.

かぞえて みる と、 九十九わ います。
He counted and there were ninety nine.

かもたち は なに も しらず に、 しずか に ぬま に ういて います。
The ducks floating quietly in the marsh didn't know anything.

--

かかる、かかります、かかって、掛かる = be caught
かぞえる、かぞえます、かぞえて、数える = count
しらず に = same as しらない で = not knowing
ぬま、沼 = marsh
うく、うきます、ういて、浮く = float

page 5

「しめ、 しめ。 あと 一わ で 百ぱ だ ぞ。」
ごんべえさん は、 大(おお)よろこび。 わな に つないで ある
ふとい つな を にぎり ながら、 じっと まって いました。

--

「しめ、 しめ。
"That's it, I've got it.

あと 一わ で 百ぱ だ ぞ。」
One more and it will be a hundred."

ごんべえさん は、 大(おお)よろこび。
Mr. Gonbee was very happy.

わな に つないで ある ふとい つな を にぎり ながら、
じっと まって いました。
He waited patiently while holding the thick rope tied to the traps.

--

つなぐ、つなぎます、つないで、繋ぐ = tie
ふとい = thick, big
つな、綱 = rope
にぎる、にぎります、にぎって、握る = grasp, grip, take hold of
じっと = still, patiently

page 6

そのうち に、 ぬま が かがみ の ように かがやきました。
むこう の 山(やま) の うしろ から、 お日(ひ)さま が かお を だした の です。
すると かも たち は まぶしくて、 いっせい に はね を ひろげて、
空(そら) へ とびあがりました。

--

そのうち に、 ぬま が かがみ の ように かがやきました。
Before long the marsh shined like a mirror.

むこう の 山(やま) の うしろ から、
From behind the mountain over there,

お日さま が かお を だした の です。
the face of the sun came out.

すると かも たち は まぶしくて、
And then the ducks were dazzled, and

いっせいに はね を ひろげて、
all together opened their wings, and

空(そら) へ とびあがりました。
took off into the sky.

--

そのうち = before long
かがみ = mirror
かがやく、かがやきます、かがやいて、輝く = shine
むこう = over there
うしろ = back side
お日さま = the sun
まぶしい = dazzling
いっせいに = all together
はね、羽根 = wing
ひろげる、ひろげます、ひろげて、広げる = open
とびあがる、とびあがります、とびあがって、飛びあがる = take off

page 8

「こりゃ、 たいへん だ。 どうする べえ。」
ごんべえさん は、 あわてて つな を ひっぱりました が、
あいて は 九十九わ の かも です。
ごんべえさん は ずるずる ひきずられ、 かも と
いっしょ に 空 へ のぼって いきました。

--

「こりゃ、 たいへん だ。 どうする べえ。」
"This is troublesome. What shall I do."

ごんべえさん は、 あわてて つな を ひっぱりました が、
Mr. Gonbee confusedly pulled the rope, but

あいて は 九十九わ の かも です。
is opposed by ninety nine ducks.

ごんべえさん は ずるずる ひきずられ、
Mr. Gombee was drug little by little, and

かも と いっしょ に 空 へ のぼって いきました。
together with the ducks went climbing into the sky.

--

こりゃ = これ は = this is
べえ = exclamation, used by farmers and people living in country
あわてる、あわてます、あわてて、慌てる = be confused, be flurried
ひっぱる、ひっぱります、ひっぱって、引っ張る = pull, stretch
あいて、相手 = an opponent, a companion, a partner
ずるずる = little by little
ひきずる、ひきずります、ひきずって = drag
のぼる、のぼります、のぼって、登る = climb

page 10

の を こえ、 山 を こえて、
ごんべえさん は とんで いきました。
そのうち に つな が よじれて、
ぷつん と きれて しまいました。
ごんべえさん は、 まっさかさま。
「たすけて くれぇーー」

--

の を こえ、 山 を こえて、
ごんべえさん は とんで いきました。
Mr. Gonbee went flying over the field and over the mountain.

そのうち に つな が よじれて、
Before long the rope became twisted, and

ぷつん と きれて しまいました。
putsun, broke.

ごんべえさん は、 まっさかさま。
Mr. Gonbee, head over heels.

「たすけて くれぇーー」
"Help me..."

--

の、野 = field
こえる、こえます、こえて、越える = go over, get over, cross
よじれる、よじれます、よじれて = be twisted
ぷつん = sound of rope breaking
きれる、きれます、きれて、切れる = cut
まっさかさま = head over heels

page 12

おちた ところ は、 やわらかい あわばたけ。
ごんべえさん は、 かすりきず ひとつ おいません。
「ああ、 よかった。 たすかった よ。」
ほっと むね を なでおろしました が、 はたけ の
あわ が めちゃくちゃ です。

--

おちた ところ は、 やわらかい あわばたけ。
The place he fell, a soft foxtail millet field.

ごんべえさん は、 かすりきず ひとつ おいません。
Mr. Gonbee did not have one scratch.

「ああ、 よかった。 たすかった よ。」
"Ahh, good. I was saved."

ほっと むね を なでおろしました が、
He felt greatly relieved, but

はたけ の あわ が めちゃくちゃ です。
the foxtail millet field was ruined.

--

おちる、おちます、おちて、落ちる = fall
やわらかい = soft
あわ = foxtail millet
かすりきず = a scratch
たすける、たすけます、たすけて、助ける = to help
ほっと する = be relieved
むね、胸 = chest
なでおろす、なでおろします、なでおろして = stroke down, feel greatly relieved
めちゃくちゃ = spoil, ruin

page 13

「ひとで が たりない のに、
よけいな こと を して くれた ね。」
おひゃくしょう に しかられる と、
ごんべえさん は あたま を かき ながら いいました。
「すみません。 いっしょうけんめい はたらきます から、
ゆるして ください。」

--

「ひとで が たりない のに、
"Though we are short of help,

よけいな こと を して くれた ね。」
you gave us extra work."

おひゃくしょう に しかられる と、
He was scolded by the farmer, and

ごんべえさん は あたま を かき ながら いいました。
while Mr. Gonbee scratched his head, he said

「すみません。
"Sorry.

いっしょうけんめい はたらきます から、 ゆるして ください。」
I will work as hard as I can, so please forgive me."

--

ひとで = a hand, help
たりる、足りる = be enough
たりない = short, lack
のに = though, as
よけいな = extra
して くれる = to do something for others
おひゃくしょうさん = farmer
しかる、しかります、しかって、叱る = scold, tell off
かく、かきます、かいて、掻く = scratch
いっしょうけんめい = hard, as ~ as one can
ゆるす、ゆるします、ゆるして、許す = forgive

page 14

ごんべえさん は、 あわばたけ で はたらく こと に なりました。
あせ を ながし ながら、 かま で あわ を かって いると、
ふとい あわ の くき が ありました。
力(ちから) を いれて、 その くき を かりとろう と する と、
くき が しなって、 ぱちん と おしり に あたりました。

--

ごんべえさん は、 あわばたけ で はたらく こと に なりました。
Mr. Gonbee began working in the foxtail millet field.

あせ を ながし ながら、
While sweating, and

かま で あわ を かって いると、
reaping foxtail millet with a sicle,

ふとい あわ の くき が ありました。
he found a thick foxtail millet stem.

力(ちから) を いれて、
With power,

その くき を かりとろう と する と、
he tried to cut down that stem, and

くき が しなって、
the stem bent down, and

ぱちん と おしり に あたりました。
pachin, hit him in the rear end.

--

あせ を ながす = to sweat
ながす、ながします、ながして、流す = shed, wash away
かま、鎌 = a sickle, a reaping hook
かる、かります、かって、刈る = reap, mow
いると = while
ふとい = thick
くき、茎 = a stem
ちから、力 = with power
いれる、いれます、いれて、入れる = put in, with power
かりとる、かりとります、かりとって、刈り取る = mow, cut down, reap, harvest
と する = to try to
しなる、しなります、しなって = bend down
ぱちん = sound of hitting something
おしり = rear end, butt
あたる、あたります、あたって、当る = hit, touch

page 15

ごんべえさん は はじきとばされて、
こま の ように まわり ながら、 また 空(そら) へ
とんで いきました。
「たすけて くれぇ。 め が まわる よーー」

--

ごんべえさん は はじきとばされて、
Mr. Gonbee snapped away, and

こま の ように まわり ながら、
while spinning like a top,

また 空(そら) へ とんで いきました。
again he went flying into the sky.

「たすけて くれぇ。 め が まわる よーー」
"Please help me. My eyes are spinning!"

--

はじく、はじきます、はじいて、弾く = snap
とばす、とばします、とばして、飛ばす = fly, let ~ fly
こま = a top

page 16

の を こえ、 山 を こえて、 おちた ところ は かさやさん の にわ です。
ほして あった たくさん の かさ が、 こわれて しまいました。
「ひとで が たりない のに、 よけいな こと を して くれた ね。
いったい どうして くれる ん だ。」
かさや の しゅじん は、 かんかん です。

--

の を こえ、 山 を こえて、
He crossed over field, he crossed over mountains, and

おちた ところ は かさやさん の にわ です。
the place that he fell was the garden of an umbrella store.

ほして あった たくさん の かさ が、 こわれて しまいました。
He broke many umbrellas that were being dried.

「ひとで が たりない のに、
"Though we are short of help,

よけいな こと を して くれた ね。
you gave us extra work.

いったい どうして くれる ん だ。」
What on earth can you do!"

かさや の しゅじん は、 かんかん です。
The umbrella shopkeeper flew into a rage.

--

こえる、こえます、こえて、越える = cross over
おちる、おちます、おちて、落ちる = fall
ほす、ほします、ほして、干す = (to) dry
あった = from ある
こわれる、こわれます、こわれて、壊れる = break
いったい、一体 = on earth
しゅじん = a storekeeper
かんかん = flew into a rage

page 17

「すみません。 いっしょうけんめい
はたらきます から、 ゆるして ください。」
ごんべえさん は、 また あたま を
かき ながら、 かさやさん で はたらく
こと に しました。

--

「すみません。
"I'm sorry.

いっしょうけんめい はたらきます から、 ゆるして ください。」
I will work as hard as I can, so please forgive me."

ごんべえさん は、 また あたま を かき ながら、
Mr. Gongee, while scratching his head again,

かさやさん で はたらく こと に しました。
decided to work for the umbrella shopkeeper.

--

~ こと に する = to decide to ~

page 18

ごんべえさん は、 ほんとう に よく はたらきます。
かさ を はって は、 にわ へ ほし に いきます。
かさや の しゅじん は、 おおよろこび。
「あんた は かさ を はる の も じょうず じゃ よ。
いつ まで も いて くれると、 たすかる が のう......」
しゅじん が ほめて くれる ので、 ごんべえさん も
うれし そうです。

--

ごんべえさん は、 ほんとう に よく はたらきます。
Mr. Gonbee, truly worked very hard.

かさ を はって は、 にわ へ ほし に いきます。
Each time he made an umbrella, he took it to dry in the garden.

かさや の しゅじん は、 おおよろこび。
The umbrella shopkeeper was very happy.

「あんた は かさ を はる の も じょうず じゃ よ。
"You are also good at making umbrellas!

いつ まで も いて くれると、 たすかる が のう......」
If you stay forever, it would be helpful..."

しゅじん が ほめて くれる ので、 ごんべえさん も うれし そうです。
As the shopkeeper praised him, Mr. Gonbee looked happy.

--

はる、はります、はって = to stick, to affix
いつ まで も いる = stay forever
ほめる、ほめます、ほめて、褒める = praise
verb + くれる = somebody does verb for you
ので = as
そうです = to look like something

page 20

はった かさ を にわ に ほして いる と、 かぜ が でて きました。
かさ は ころころ ころがって、 あっちこち で ぶつかり、
のり が はがれて しまいました。
「まったく しょう が ねえ かぜ だ な......」
ぶつぶつ いい ながら、 はがれた かさ を なおして いる と、
きゅうに つよい かぜ が ふいて きました。
「ごしゅじん、 ごしゅじん。 ちょっと きて くださーーい。」
こえ を あげました が、 どう に も なりません。
ごんべえさん は、 またまた かさ と いっしょ に
空 へ とばされて しまいました。

--

はった かさ を にわ に ほして いる と、 かぜ が でて きました。
The finished umbrellas were drying in the garden when a wind came.

かさ は ころころ ころがって、
The umbrellas rolled (korokoro), and

あっちこち で ぶつかり、
hit here and there, and

のり が はがれて しまいました。
the paste came off.

「まったく しょう が ねえ かぜ だ な......」
"This wind is not helpful at all..."

ぶつぶつ いい ながら、
While complaining, and

はがれた かさ を なおして いる と、
fixing the broken umbrellas,

きゅうに つよい かぜ が ふいて きました。
suddenly a strong wind came blowing.

「ごしゅじん、 ごしゅじん。
"Master, master.

ちょっと きて くださーーい。」
Please come for a second."

こえ を あげました が、 どう に も なりません。
He raised his voice, but he couldn't do anything.

ごんべえさん は、 またまた かさ と いっしょ に 空 へ
とばされて しまいました。
Again, together with the umbrellas, Mr. Gonbee was blown into the sky.

--

ほす、ほします、ほして、干す = dry
でる、でます、でて、出る = come out
ころころ = sound of something rolling
ころがる、ころがります、ころがって、転がる = roll
ぶつかる、ぶつかります、ぶつかって = run into, hit
のり、糊 = paste, starch (glue)
はがれる、はがれます、はがれて、剥がれる = come off
まったく = really, quite, not ~ at all (negative)
しょう が ない = useless
ぶつぶつ いう = to complain
なおす、なおします、なおして、直す = fix, mend
きゅうに = suddenly
つよい = strong
ふく、ふきます、ふいて、吹く = blow
あげる、あげます、あげて、上げる = raise
どう に も ならない = couldn't do ~
またまた = again
とばす、とばします、とばして、飛ばす = fly, let ~ fly, blow off

page 23

「わし は、 どう なる ん じゃ。
どこ まで とばされて いく ん じゃい。」
ごんべえさん は かさ の え に しっかり
つかまり ながら、 いくつ も 山 を こえて
いきました。
すると、 大きな おてら が みえました。

--

「わし は、 どう なる ん じゃ。
"What will become of me?

どこ まで とばされて いく ん じゃい。」
Where am I being blown to?"

ごんべえさん は かさ の え に しっかり つかまり ながら、
While firmly holding the handle of the umbrella,

いくつ も 山 を こえて いきました。
Mr. Gonbee went over mountain after mountain.

すると、 大きな おてら が みえました。
Then, he was able to see a large temple.

--

え、 柄 = handle
しっかり = tightly, firmly
つかまる、つかまります、つかまって、掴む = hold, catch
こえる、こえます、こえて、越える = go over
おてら、寺 = temple

page 24

「よし、 あの おてら に おりて やろう。」
ごんべえさん は、 すこし ずつ かさ を
つぼめよう と しました。
ところが、 かさ は はんたい に おちょこ に
なって しまった の です。

--

「よし、 あの おてら に おりて やろう。」
"Well, I will get off at that temple."

ごんべえさん は、 すこし ずつ かさ を つぼめよう と しました。
Mr. Gonbee tried to close the umbrella little by little.

ところが、 かさ は はんたい に おちょこ に なって しまった の です。
However, the umbrella folded the other way becoming like a sake cup.

--

すこし ずつ = little by little
verb + よう = to try to verb
つぼめる、つぼめます、つぼめて = to close an umbrella, become narrower
はんたい、反対 = opposite
おちょこ = a small cup for sake

page 25

「たすけて くれぇーー」
ごんべえさん は、 目(め) を つぶりました。
おちた ところ は、 おてら の たかい
とう の てっぺん。

--

「たすけて くれぇーー」
"Help me..."

ごんべえさん は、 目(め) を つぶりました。
Mr. Gonbee shut his eyes.

おちた ところ は、 おてら の たかい とう の てっぺん。
The place he fell was the top of the high tower of the temple.

--

つぶる、つぶります、つぶって = shut, close
おちる、おちます、おちて、落ちる = fall, drop
とう、塔 = tower
てっぺん = top

page 26

「おーい。 おーい。 だれか、 ながい はしご を もって
きて くれーー。 わし を ここ から おろして くれーー」
ごんべえさん が さけんで いる と、 おてら の
こぞうさん たち が でて きました。
こぞうさん たち は 大きな ふろしき を ひろげて、
さかん に あいず を して います。

--

「おーい。 おーい。
"Hey. Hey.

だれか、 ながい はしご を もって きて くれーー。
Someone, bring a long ladder!

わし を ここ から おろして くれーー」
Bring me down from here!"

ごんべえさん が さけんで いる と、
Mr. Gonbee was screaming, and

おてら の こぞうさん たち が でて きました。
The young Buddhist monks of the temple came out.

こぞうさん たち は 大きな ふろしき を ひろげて、
The young monks spread a large Japanese wrapping cloth, and

さかん に あいず を して います。
were strongly gesturing.

--

だれか = someone
はしご、梯子 = ladder
おろす、おろします、おろして、下ろす = take down
さけぶ、さけびます、さけんで、叫ぶ = shout, scream
こぞう、小僧 = a young Buddhist monk
ふろしき、風呂敷 = a Japanese wrapping cloth
ひろげる、ひろげます、ひろげて、広げる = spread
さかん、盛ん = hard
あいず、合図 = sign (gesture), signal, gesture

page 29

「なに、 なに? ここ から あそこ へ
とびおりろ って? だいじょうぶ かな。
もし、 あの ふろしき の 上(うえ) に
おちなかったら、 わし は おだぶつ。
いっかん の おわり じゃ ぞ。」
ごんべえさん が、 ふるえ ながら
ふろしき を みつめて いる と、 足(あし) が
つるり と すべりました。
がらがらがら......
ごんべえさん は、 まっさかさま。
とう の 上 から ふろしき の なか へ
おちて いきました。

--

「なに、 なに?
"What, what?

ここ から あそこ へ とびおりろ って?
Jump down from here to there?

だいじょうぶ かな。
I wonder if its ok.

もし、 あの ふろしき の 上(うえ) に おちなかったら、
If I don't fall on the furoshiki, then

わし は おだぶつ。
I will die.

いっかん の おわり じゃ ぞ。」
It will be the end."

ごんべえさん が、 ふるえ ながら ふろしき を みつめて いる と、
While trembling, Mr. Gonbee was staring at the furoshiki, and

足(あし) が つるり と すべりました。
his legs slipped.

がらがらがら......
Garagaragara (sound of something falling)......

ごんべえさん は、 まっさかさま。
Mr. Gonbee went head over heels.

とう の 上 から ふろしき の なか へ おちて いきました。
From the top of the tower he fell into the furoshiki.

--

とびおりる、とびおります、とびおりて、飛び降りる = jump down
おだぶつ = die
ぶつ、仏 = Buddha
いっかん、一貫 = consistency
じゃ ぞ = sentence ending for old men
ふるえる、ふるえます、ふるえて、震える = tremble, shiver
みつめる、みつめます、みつめて、見つめる = stare
つるりと = slide, slip
すべる、すべります、すべって、滑べる = slide, slip
つるり と すべる = slip
まっさかさま = head over heels
おちる、おちます、おちて、落ちる = fall

page 31

どしん!!
その ひょうし に、 ふろしき の はし を
もって いた こぞうさん たち が、 みんな で
なかよく ごっちんこ。 火(ひ)花(ばな) が とびました。
その 火花 が もえうつって、 こんど は とう が
ぼうぼう かじ に なって しまいました。
ーー「かもとりごんべえ」 の おはなし、 これ で おしまい。

--

どしん!!
Bump!!

その ひょうし に、
At that time,

ふろしき の はし を もって いた こぞうさん たち が、
the young monks holding the edges of the furoshiki,

みんな で なかよく ごっちんこ。
all came together gocchinko (sound of bumping heads).

火(ひ)花(ばな) が とびました。
Sparks flew.

その 火花 が もえうつって、
Those sparks caught fire, and

こんど は とう が ぼうぼう かじ に なって しまいました。
next the tower boubou (burning sound) caught on fire.

ーー「かもとりごんべえ」 の おはなし、 これ で おしまい。
With this, "Gonbee the duck hunter" story closes.

--

どしん と = with a bump
ひょうし、拍子 = time
はし、端 = edge, side, tip
もつ、もちます、もって、持つ = hold
なかよく、仲良く = make friends with, become friends with
ごっちんこ = sound of bumping heads
ひばな、火花 = sparks
もえうつる、もえうつります、もえうつって、燃え移る = catch fire
こんど = next time
ぼうぼう = sound of something burning
かじ、火事 = fire